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第247回 勿体無い

 アフリカ南部にケニアがあり首都はナイロビです。平成17年3月、「もったいない」という日本語が環境保全の合言葉として全世界に知られることになりました。ノーベル平和賞受賞者でケニア環境副大臣のワンガリー・マータイ氏の演説により紹介されました。その内容は、消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、資源再利用(リサイクル)、そして修理の4つの「R」を表す言葉が「もったいない」の根元であり「限りある資源を有効に使い、みんなで公平に分担すべきだ。そうすれば、資源をめぐる争いである戦争は起きない」と主張しました。このように日本語が世界に紹介されることは誇らしい報せです。しかも、日本人でなく、ケニア人だったことはより意義深い。「勿体無い」とは、穢され、粗末に扱われ、能力が発揮されず、本来あるべき状態から離れているさまなどを惜しみ嘆く気持ちを表す言葉として用いられています。しかし、現実は寂しいかぎりです。日々の残食量が年間1900万トンもあり、恥ずかしながら世界ワーストワンの国になってしまいました。本家本元の日本人は個人主義や拝金主義の垢にまみれて、「もったいない」からは程遠い社会となりました。
 ロンドンオリンピックのメダルは38個となりましたが、欧米人の笑い者になったのは食物に対するエチケット不足そのものだそうです。伝統的価値観である自然観の感覚を取り戻さなければなりません。「米を一粒でも食べ残すと目が潰れる」と教えられ育った。それは物質的なものでなく、神からの賜り物である米の神聖性によるものです。日本人は原則として食前食後に感謝から口にする言葉があります。「いただきます」とは「あなたの命を頂きます」の意味で、自分の力で生きているのではなく、大自然の恵みに生かされているということなのです。「ごちそうさま」は「ご馳走様」と書き、食事を作ってくれた人に対する謝意です。母親の中から出される「給食費はちゃんと払っているんだから」の言葉が問題視されています。全ては倫理不足によるものです。宗教的行為かもしれませんが一拝一拍手の動作による食前感謝と食後感謝は人が人として生きる上で、神々・大自然・食材・生産者・料理人などに感謝する美しい作法です。日本人として今一度考えてみたらどうでしょうか。

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